隠居生活


漱石の「草枕」の冒頭は以下の名文で始まる。誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。「青空文庫」から引用させていただく。

山路やまみちを登りながら、こう考えた。
 に働けばかどが立つ。じょうさおさせば流される。意地をとおせば窮屈きゅうくつだ。とかくに人の世は住みにくい。

世の中を渡る難しさを説いている。頭のいいところをひけらかす、あるいは見えすぎると嫌われる。情が深すぎると情に流されて無理をする。自分の意見をごり押しすれば衝突する。人づきあいというのは、なかなか難しいということだ。

今年、組織の一員を退いたが、相変わらず世の中の難しさから解放されない。その日暮らしで引きこもっていても災いはやって来る。やはり、隠居するならば、物理的な距離も世俗から遠く離れない限りは「隠居生活」とは言えないようだ。しかし、おしゃべり相手が居なくなることは、とても耐えられないかもしれない。

山里はもののわびしきことこそあれ世の憂きよりはすみよかりけり

古今集雑下・944 よみ人しらず

2025柿

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